2012年02月23日
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三百字小説『バイバイ・リバティ船危機一髪PART-2』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 潜水艦U-4649は敵国の標準規格輸送船であるリバティ船の一隻を何日も追い続けていた。リバティ船は戦時大量生産で数千隻も建造されていたが、この船だけは違った。何しろ要人の輸送中なのだ。これを沈めれば勲章が間違いない。

 潜水艦は護衛艦が隙を見せるのを待った。潜水艦はついに攻撃チャンスを得たのだ。

 「魚雷発射用意!」艦長は最後の確認に潜望鏡深度まで浮上して敵船を見た。

 だが、敵船は既に沈みつつあった。

 「えーっ! まだ攻撃してないのになんで!」

 「粗製濫造のリバティ船はよく工事の手抜きで沈むと聞きます」

 勲章は夢と消えた。

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

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